2020年 3月 10日(火)
人を知る者は智、自ら知る者は明なり。人に勝つ者は力有り、自ら勝つ者は強し。足るを知る者は富み、強めて行なう者は志有り。
老子 第三十三章より
いつもはアニメのセリフを出してくるのに、今日はまた難しい言葉を出してきたな…なんて思われるかもしれない。
でも、こういうことはたくさんのことにとって重要で、別に「これは絶対に覚えておいたほうがいい」というものではないけど、頭の片隅にあってもいいと思うから紹介しておこうかと。
【 現代文 】
他人を理解する事は普通の知恵のはたらきであるが、自分自身を理解する事はさらに優れた明らかな知恵のはたらきである。他人に勝つには力が必要だが、自分自身に打ち勝つには本当の強さが必要だ。満足する事を知っている人間が本当に豊かな人間で、努力を続ける人間はそれだけで既に目的を果たしている。
「何のことだよ」と思う人もいるかもしれないし、「なるほど」と思う人もいるかもしれないね。
この文章は「外」と「内」のことを書かれていて、「自分の外側ばかりを気にして、自分の内側は気にしないんだね」ということを表現されているわけだけど。
目標タイムばかり気にしてしまって、目標タイムから練習内容やレース展開を考えるあまり、自分自身がどれだけのパフォーマンスを持ち合わせているかを把握していないということに置き換えられると思うの。
マラソン大会で自己ベストを更新し、次の目標を立てたり次の目標達成へ向けて練習プランを立てるのは良いことだけど、そこには自分自身の現状は何一つ考慮されていないよねって意味では。
たとえば、「4時間を切ること(サブ4)ができたから、次の目標は3時間45分かな」のようなもの。
確かに目標としては適度な難易度かもしれないけど、自己ベスト記録を更新できたとはいっても内容的には課題があるんじゃないのかな、と。
だって、後半(30km以降)に失速して自己ベストを更新したかもしれないし、失速はなかったとしても途中で何度も立ち止まっていたかもしれないし。
もしかしたら、練習でやってきた以上のことが偶然にも発揮されて、思っていた以上の記録が出たのかもしれないし。
そうなると「自己ベスト記録が出たのは必然だったのか」という疑問が残る。
もし自己ベスト記録は必然ではなく偶然にも出てしまった記録なのであれば、その自己ベスト記録は偶然や奇跡ではなく、もう一度再現する(再現できるかどうかを証明する)必要があるんじゃないのかな。
ということは、大会以降の練習プランは「自己ベスト記録を再現する」ということになるわけだから、これまで通りの練習になるのが妥当なプランなんだけど…
(自己ベスト記録を再現するということは自己ベスト記録をまた更新するというわけだから、自己ベスト記録はまた更新されるということになるわけだよね)
気付けたかな?
今の話は「目標タイムの達成」という自分の外側から練習を考えず、「自己ベスト記録の再現(更新)」という自分の内側から練習を考えていき、目標タイムへと近づいていこうというもの。
他にもある。
大会へ参加するときは目標ペースから当日のペースを決定しているけど、最後まで走り通せるペースから当日のペースを決定するのも同じ。
(練習の時は目標ペースで練習しないとね)
一緒に練習をしている仲間やSNSで繋がりのある誰かが自己ベスト記録更新を連発していたり、ものすごい練習を積み重ねていってることに焦りを感じることもあるけど、レースを走って記録を出すのは自分自身なのだから、自分の練習に集中して一つ一つを丁寧にクリアしていかないといけないのも。
練習プランを立てるときに「これが足りていない」「あれが足りていない」と自分に足りていないものばかりを強化しようと考えてしまうのも、「これが強み」「あれができる」と考えることができないのも同じかもしれない。
これらはいずれも練習の過多を招き、身体のどこかを痛め、結果として今以上に苦しい佳境に立たされることになるかもしれないのにね。
これを「走ることには関係ないじゃないか」と考えて軽視するのか、「なるほどね」とか「そういう考え方はなかったな」と参考にしてもらうのかで練習の意図が大きく変わってくる。
上のクラスへ行くほどこの感覚を持ち合わせていて、上のクラスへ行った人ほど普通に感じていることだから、そのクラスではない人には理解し難いのかもしれない。
名選手に名コーチがいないわけはない。
名選手だったコーチの話から上のクラスの思考・思想を学び、同じような理解力を持ち合わせたら言われていることも理解できるし、その言われていることを再現することもできるようになるんだから。
(強くなったあの大学は指導者の理論を理解したからであって、強くなった選手とそうではない選手の違いはそこにある。)
当然のことながら思考・思想が薄れるほどパフォーマンスは低下するし、強い年代とそうではない年代の話を聞けば納得できるんだよ。
パフォーマンスは動機付けの部分まで遡るので、思考・思想の部分から変わっていけばパフォーマンスも向上するし、その反対も十分に考えられるというわけだ。
日頃の言動・行動がパフォーマンスにつながっていくんだよ。
(これ、ミラーの法則だね)