2020年 7月 21日(火)
「大会を目標にして練習を計画的にやってきた自分としては大会が次々と中止になったらモチベーションが上がらない」という内容のツイートを見つけたけど、それはちょっと違うんじゃないのかな…と思ったのでここへ書き記すことに。
このやり方で練習をしていくと問題が出てくるはずなので羅列してみよう。
・大会が終わるたびに目標がリセットされる
・大会が連続(集中)すると練習が頓挫する可能性が高くなる
・大会毎に練習を計画するので「ベスト記録更新を狙う」という目標設定が突貫工事となる
・大会が迫るほどに進捗状況に遅れが発生すると焦りが生じる
・実力に見合わない無理な練習計画を立てることになるので身体を痛めたり体調を崩すことになる
・身体を痛めたり体調を崩すことで練習がさらに遅れる可能性がある
・練習計画があるのでコンディションが回復しないままに練習を再開する恐れがある
・以上のことから大会で目標を達成することが困難になる
仮に、大会出場を決めたときの目標が達成されたのであれば目標は達成できる見込みの大きなものであったと考えられるから、練習計画は当人にとって比較的容易な内容になるので本当にモチベーションとなっていたかは定かではない。
もしくは、偶然にも身体を痛めたり体調を崩すこともないままに目標が達成された場合、その練習計画が正しかったと勘違いをする可能性があるので次の計画が勘違いをグレードアップした内容で練習を実践することとなり、身体を痛めたり体調を崩す可能性が高くなります。
奇跡的にトレーニングの原理やトレーニングの原則に則った範囲内で練習ができていると身体を痛めたり体調を崩すことはないかもしれませんが。
そうなると「自分は成功している」と思う人も出てくるかもしれません。
うまくいっている間は誰も「その体験」を疑わないし、そこに大切な話と触れ合うチャンスがあったとしても耳を傾けないでしょう。「その体験」を疑っていないだろうから人にも教えてあげようとしたり、自分自身と同じように「好記録を出す」という幸せな体験を共有してもらおうと動画や文章で広めようとするでしょう。
でも、それが原因となって身体を痛めたり体調を崩す人がいたとしたら。同じようにやっているつもりなのに同じような体験を味わえない人がいたとしたら。
そのときはどうするつもりでしょうか。
どうやって責任を取るんでしょうか。
でも責任は取らないんですよね。
同じように実践した人の練習や生活などから自分自身とは違っている点を見つけ出し、「ここがダメだと思う」「ここで我慢をしておけば」と自分とは違った点を指摘してみたり同じ体験が味わえる可能性がなくなった場所を指摘して「そこを改善しよう」と声をかけ、あたかも自分には責任がないというスタンスを貫こうとするだけですから。
これが同じチームに所属していたり仲良くしている人であれば無報酬だったりするので恨み辛みもなく、次の大会へ向けて練習をしていくのでしょうね。
では、これが有料だった場合は…
それを仕事にしている人達が増え、動画や文章などで一方的に発信をしている人もいれば認知度が高い人が間違った情報や最後まで伝えきれていない情報を広めようとしているケースもあります。
そうならないようにするためにコーチやトレーナーが存在しているはずです。
もっと細かなところまで丁寧に、手厚く親切に、まさに「懇切丁寧に」という言葉がピッタリな知識を広めるべきですが、自分自身のちっぽけな成功体験から導き出された理想や理論を伝えているだけコーチやトレーナーも増えているのが現状かもしれません。
大切なものほど見つかりにくかったり、あっさりと見落としていることがほとんどですよ。
さてと。
シンプルに解答を提案しておきます。
「パフォーマンス(走力)は練習や生活から形作られていくもの」ということを大前提に、日々の練習はパフォーマンスを向上させるために長くてつらい練習をしたり速くて苦しい練習を消化しています。
目標とする大会へ向けてではありません。
「自分自身が目標とする結果(記録などの成績)を出すため」に日々の練習を消化し、うまくいくこともあればうまくいかないこともある中で「これぐらいならやれるかもしれない」という自信を少しずつ大切に育て、その小さな自信を目標とする結果に近づけていくことが練習をする目的です。
そこへ「大会出場」というスケジュールが組み込まれることによって練習に対する集中力が高まり、日々の練習で育ててきた自分だけのイメージを「大会ではこんな感じで走るんだ」というイメージとリンクさせていくことで精神的にも肉体的にもコンディションが整ってきます。
大会間近になり、疲労が思っているように蓄積している場合は練習強度や練習量などの負荷をコントロールして大会当日へ向けて調子が良くなるようにするはずですし、疲労が思っているほど蓄積していない場合は残りの日数と疲労度合いに折り合いをつけながら練習を継続するのがコンディショニングです。
あとは大会当日に練習をしてきた成果と思いの丈をぶつけるだけです。
思いの丈をぶつけるとは言ったけど前半から闇雲に走れと言っているわけではありません。
大会当日までに自分自身にイメージができるパフォーマンスと大会情報や天気予報などから戦略を立て、想像し得る限りのシチュエーションに対する戦術を確立しておき、それを冷静に淡々と遂行していくことで練習計画を考えたときに立てた目標が達成されるというわけです。
これらを実践できれば「大会がなくなってモチベーションが維持できない」という問題も起こりませんし、「大会でうまく走れない」「どうしても身体を痛めてしまう」という問題も起こりません。
1人で考えるには考えないといけないことが多過ぎるからコーチやトレーナーが存在しています。
厳しいことを言っているように聞こえたり、納得がいかない(受け入れたくない)ことを言っているように聞こえるかもしれませんが、トレーニングの原理やトレーニングの原則の他に基礎や基本と呼ばれるものがないからかもしれません。
「目標を達成したい」「怪我なく走れるようにしたい」「大会を良い状態で迎えたい」という方々はもっと気軽に相談をしてみてはどうでしょうか。そこから「一緒にやっていきたい」と強く思えたのであれば、その後をどうするかを考えたら良いと思います。
余談ですが…
その戦略や戦術を立てることもコーチの役割かもしれませんが、具体的な目標もないままに戦略や戦術を立てても机上の空論です。
(具体的な目標があったとしても指導理念や指導方針がなければ同じですけど)